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2014年9月29日月曜日

何をするのか:パキスタン編(その3)

 事務局長の野口です。前回の投稿で触れた世界遺産タキシラの集中豪雨被害ですが、遺構の一部が崩落したジャンディアル(Jandial)遺跡を所管するハイバル・パフトゥンフワ州考古・博物館局長に確認をとったところ、早速、必要な予算を確保して修復措置を開始したとのことです。素早い対応が図られたということで、まずは一安心です。もう一件、パンジャーブ州が管轄するジョーリアン(Jaulian)遺跡で、遺構の覆屋が雨漏りをしている件についても、対応について確認中です。

 このように、イスラム教徒が多数派であるパキスタンにおいて、仏教文化遺産をはじめイスラム教以外の文化を背景とする遺産が放棄されたり、意図的に破壊されたりすることはなく、むしろ積極的に保護されているのです。
タフティ・バーイ遺跡(ユネスコ世界遺産)
玄奘も訪れたといわれる著名な遺跡で比較的良く保存されている
しかしながら、いかに現地の専門家たちが熱意をもっていても、それだけではカヴァーしきれないことが多くあるのも事実です。残念ながら、予算や人材、技術の不足から保護の手が行き届かない文化遺産も少なくありません。今後、経済発展が続けば、文化遺産の保護か開発かという局面が次々に生じることも想像に難くありません。
 私たち、南アジア文化遺産センターでは、民間の小規模な組織ではありますが、逆にそのメリットを最大限に生かした活動が可能です。現地との協力関係のネットワークを通じて、対策が必要だけれども手が行き届かない案件を草の根レベルから拾い上げ、より大規模な枠組みへバトンタッチするまでの間の初動の支援を行なうことは、私たちが目指すプロジェクトのかたちのひとつです。
 緊急性の高い案件への即応はもちろんのこと、当事国や国際社会において認知度の低いーしかし重要な案件に粘り強く取り組み周知を進めることも重要でしょう。これから本格的に取り組みを開始する予定の、パキスタン北部ディアメル・バシャ・ダム建設に伴う文化遺産水没問題は、そのモデル・ケースになることでしょう。
 そしてもう一つ、対象となる文化遺産ーつまり遺跡や遺物だけを取り上げるのではなく、それらが置かれている状況を、そこに関わる人びと/取り巻く社会と一体のものとして理解し、専門家に限定することなく、幅広い利害関係者と議論を深め、「より良い」解決策を見つけ出すことがきわめて重要だと考えています。このような観点から、パキスタン北西部ハイバル・パフトゥンフワ州において、文化遺産への取り組みの地域社会安定化への寄与について、多分野の研究者・専門家や言語・宗教的マイノリティを含むグループで議論し、実地調査や実践的なワークショップを行なうプロジェクトを計画しています。
ペシャワール博物館にて、パシュトゥーン人の親子
仏教遺跡や仏教文化遺産の展示された博物館はふつうに人びとが訪れ賑わっています
 こうしたプロジェクトの詳細については、またあらためて紹介させていただきます。

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