このように、イスラム教徒が多数派であるパキスタンにおいて、仏教文化遺産をはじめイスラム教以外の文化を背景とする遺産が放棄されたり、意図的に破壊されたりすることはなく、むしろ積極的に保護されているのです。
![]() |
タフティ・バーイ遺跡(ユネスコ世界遺産) 玄奘も訪れたといわれる著名な遺跡で比較的良く保存されている |
私たち、南アジア文化遺産センターでは、民間の小規模な組織ではありますが、逆にそのメリットを最大限に生かした活動が可能です。現地との協力関係のネットワークを通じて、対策が必要だけれども手が行き届かない案件を草の根レベルから拾い上げ、より大規模な枠組みへバトンタッチするまでの間の初動の支援を行なうことは、私たちが目指すプロジェクトのかたちのひとつです。
緊急性の高い案件への即応はもちろんのこと、当事国や国際社会において認知度の低いーしかし重要な案件に粘り強く取り組み周知を進めることも重要でしょう。これから本格的に取り組みを開始する予定の、パキスタン北部ディアメル・バシャ・ダム建設に伴う文化遺産水没問題は、そのモデル・ケースになることでしょう。
そしてもう一つ、対象となる文化遺産ーつまり遺跡や遺物だけを取り上げるのではなく、それらが置かれている状況を、そこに関わる人びと/取り巻く社会と一体のものとして理解し、専門家に限定することなく、幅広い利害関係者と議論を深め、「より良い」解決策を見つけ出すことがきわめて重要だと考えています。このような観点から、パキスタン北西部ハイバル・パフトゥンフワ州において、文化遺産への取り組みの地域社会安定化への寄与について、多分野の研究者・専門家や言語・宗教的マイノリティを含むグループで議論し、実地調査や実践的なワークショップを行なうプロジェクトを計画しています。
こうしたプロジェクトの詳細については、またあらためて紹介させていただきます。
![]() |
ペシャワール博物館にて、パシュトゥーン人の親子 仏教遺跡や仏教文化遺産の展示された博物館はふつうに人びとが訪れ賑わっています |
0 件のコメント:
コメントを投稿